映画「ロストケア」のあらすじと感想【他人事とは思えない介護地獄】

ゆっちゃんの映画ブログ邦画

こんにちは
映画マニアのワーキングマザー、ゆっちゃんです。

彼はなぜ 42人を殺したのか?

映画「ロストケア」のキャッチコピーです。

この映画は、2013年に日本ミステリー大賞新人賞を受賞した葉真中顕の「ロスト・ケア」の映画化になります。

実は、10年前に前田監督は、松山ケンイチとこの作品を映画化したいと意気投合していたそうなんです。

その後、前田監督がいくつかの脚本を書いて、映画会社を回ったらしいのですが、なかなかうまくいかず、「shall we ダンス」の助監督をしていた時に、日活のプロデューサーに興味を持ってもらったようです。

でも、映画的には女性目線の方がよいということで、脚本家の龍居由香里さんに共同脚本を依頼したそうです。

映画って、考案してから公開されるまで何年もかけて仕上げていくので、本当に根気がいる仕事ですよね。

だからこそ、出来上がった時は、「やったぁ!」って思うんでしょうね♪

 

私は、有料老人ホームで介護職員として働いているため、この手の作品にはとても興味があります。

認知症の入居者様のケアをしている時に、よく感じることは「家庭で認知症の親を介護するのは、とても厳しく無理があるな」ということです。

特に、仕事をしながら、家事をしながら、育児をしながらなど他と並行してお世話し続けることは、尋常でない精神力と体力が必要になってきます。

もちろん、介護保険で訪問介護やショートステイなど一時的な休息をとることはできても、介護する側の気持ちは沈む一方です。

だからと言って、「殺す」ことは絶対にあってはいけないことだと思います。

そんなことを考えながら、今回は映画「ロストケア」についてレビューしたいと思います。

製作年:2022年

時間:114分

監督:前田哲

出演:松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、藤田弓子、梶原善、柄本明等

前田監督が主に手掛けた作品は、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「そして、バトンは渡された」「老後の資金がありません」で、2021年には報知映画賞の監督賞を受賞しています。

1)映画「ロストケア」のあらすじ

最初に、映画「ロストケア」のあらすじをご紹介しますね。

ネタバレはありませんので、ご安心ください。

検事の大友秀美(長澤まさみ)は、あるアパートへ行き、死後2か月の腐乱した男の遺体がビニールに入れられて運ばれるところをじっと見ていました。

部屋の中はゴミ屋敷となり、悪臭を帯びています。

その頃、長野県の訪問介護センターでは、介護職員の斯波宗典(松山ケンイチ)や猪口(峯村リエ)、足立(加藤奈津)らが、毎日利用者様の自宅へ赴き、介護業務で忙しい日々を送っていました。

斯波は、困っている利用者様を見るとすぐに助けに行くため、職員の中でも「できた職員だ」と思われていました。

センター長は、そんな斯波に仕事を押し付けることが多く、自分はお酒を飲んだりサボったりしていましたが、職員全員、そんなことはお見通し。

そんなある日、民家で老人の死体と、訪問介護センターの所長の死体が発見されました。

老人は、斯波が勤務する訪問介護センターの利用者様でした。

警察が動き、数日後防犯カメラに映る斯波の姿を見つけ、容疑者として連行します。

しかし、斯波は、利用者様の家族からは絶大なる信頼を得ている、評判の良い介護士でした。

斯波は、体調が気になった利用者様宅へ行ったら、所長が金目の物を盗んでいたため、もみ合いになり階段から落ちてしまったと話し出しました。

この事件を担当する大友秀美は、数字の得意な助手の椎名(鈴鹿央士)にデータ分析してもらい、斯波が勤務するセンターの利用者様死亡率が、県内でも群を抜いていることを突き止めます。

そして、利用者様の死亡時刻が、斯波の休日に集中していることも判明。

斯波は、大友にそのデータを見せられ、自分が42人を殺したことを自供しました。

しかし、訪問介護センターの死亡した利用者様は41人。

あと一人は誰なんでしょうか?

そして、なぜ斯波は多くの利用者様を殺してしまったのでしょうか?

この続きは、ぜひ映画をご覧ください。

2)映画「ロストケア」の感想

次に映画「ロストケア」の感想をご紹介しますね。

まずは、役者さんの演技力が素晴らしい!

松山ケンイチと長澤まさみの対峙するシーンは、アップが多く目と目の闘いを感じました。

殺人を犯した松山ケンイチのセリフがより強く胸に突き刺さりました。

「安全なところにいるあなた(大友)と穴に落ちてしまった私は違います」

「一度穴に落ちてしまったら、這い上がるのは難しい」

生活保護を申請しても「あなた働けるでしょ」と一言で却下。

働くこともできず、お金が無くなっていき、1日3度のご飯を初めて食べることができなくなった・・・。

あぁ、国は本当に冷たいなぁって感じました。

逮捕されてからの松山ケンイチの表情が、哀しいですね。

地獄を見てしまった後の、絶望感を通り越した虚無感が漂っています。

ここでの松山ケンイチは、役作りとしてサイコキラー風ではなく、ごく普通の穏やかに演じるようにしたそうです。

それに対峙する長澤まさみは、施設に入った母親が認知症になってきた姿を見て悲しむものの、お世話は施設がやってくれるという安全地帯にいることに何となく後ろめたさを感じている様子です。

でも、認知症の親を必ず家族がみないといけない、という風潮は変えていかないと、いずれ家族自身が壊れていくと感じました。

映画の中で、松山ケンイチが長澤まさみに言います。

「家族には切っても切れない絆があります。でも、それは呪縛なんです」

この時の彼の目の奥には本当に「救ってあげたんだ」という強い気持ちが込められていたように見えました。

そして、松山ケンイチの父親役の柄本明!

この方の演技力には本当に感動してしまいます。

脳梗塞や認知症の症状や息子に対する気持ちなど、リアルすぎてとても辛く何度も涙があふれてきました。

 

高齢者白書によると、2025年には5人に1人が認知症になるというデータが出ています。

とても他人事とは思えませんね。

こういった映画は、エンタメとしてだけではなく、これからの私たちの生き方や考え方を大いサポートしてくれるテキストだと思っています。

書籍「ロスト・ケア」が出版されて3年後に相模原の知的障害者施設「津久井やまゆり園」の大量殺傷事件が起こっています。

そう考えると、斯波宗典のような考えを持つ人間が現実にいてもおかしくないってことです。

とても考えさせられる見ごたえいっぱいの作品でした。

3)映画「ロストケア」の口コミと評価

次に映画「ロストケア」の口コミと評価をご紹介しますね。

4)映画「ロストケア」の予告編

次に、映画「ロストケア」の予告編をご紹介しますね。

5)まとめ

いかがでしたか?

映画「ロストケア」のあらすじと感想をご紹介しました。

単なるエンタメとしての映画だけではなく、高齢者介護についてこれから私たちはどうやって考えていけばよいのか?ということを投げかけてくれた作品だったと思います。

ところどころで涙が止まりませんでした。

役者さんたちの迫真の演技力に感動しました。

書籍の「ロスト・ケア」と映画では、設定が少し違います。

映画では大友は女性ですが、書籍では男性です。

また、映画の中で、斯波は聖書の黄金律、マタイによる福音書で「人にしてもらいたいと思うことは何でも、人にしなさい」という言葉を心に刻んでいます。

「人が嫌がることはやっちゃいけない」ではなく、「してもらいたいことを人にしなさい」という相手へのポジティブな結びつきを求める考え方を聖書は伝えています。

でも、してもらいたいことが必ずしも相手も同じとは限らない・・・これは、最後のシーンで遺族の一人が斯波に向けて放った言葉からわかると思います。

 

松山ケンイチと長澤まさみは、意外にも今回初共演だそうですが、とても迫力ある対峙シーンに目が離せませんでした。

今後も機会があればぜひ2人の共演を観たいと思います♪

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