
こんにちは、映画マニアのゆっちゃんです。
映画を観終わったあと、「面白かった」という言葉だけでは表現できない作品があります。
『PLAN 75』は、まさにそんな一本でした。
派手な展開や大きなアクションがある映画ではありません。それなのに、観ている間も、観終わったあとも、心の中で何度も「もし自分だったら」と考え続けてしまいます。
少子高齢化が進む日本を舞台に、「75歳以上の高齢者が自ら人生を終えることを国が支援する制度」という衝撃的な設定。
しかし、本作が描こうとしているのは制度そのものではなく、人が社会の中でどう生き、どう扱われるのかという、とても身近で切実な問題です。
観ている最中は静かな物語だと感じるかもしれません。でも、その静けさの中には胸を締めつけるような感情が何度も押し寄せてきます。
私は映画が終わってからも、この作品について何度も考えました。
今を生きる私たち全員に向けられた、大切な問いが詰まった一本です。
1)作品基本情報
- 製作年:2022年
- 時間:112分
- 監督・脚本:早川千絵
- 出演者:倍賞千恵子、磯村勇斗、河合優実、たかお鷹、ステファニー・アリアン
- ジャンル:ヒューマンドラマ・社会派ドラマ
- トリビア:本作は第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、世界中で高い評価を受けました。また、第46回日本アカデミー賞では、倍賞千恵子さんが優秀主演女優賞を受賞しています。
2)あらすじ(ネタバレなし)
超高齢社会となった近未来の日本。
政府は75歳以上の高齢者が自ら人生の最期を選択できる制度「PLAN 75」を導入します。
制度を利用する人には相談窓口が設けられ、手続きから最期までを国が支援するという、これまでにない政策が始まります。
78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、一人で静かに暮らしています。
長年まじめに働いてきましたが、高齢を理由に職を失い、再就職もうまくいきません。
住まいの問題や生活費への不安も重なり、社会とのつながりが少しずつ薄れていきます。
そんな中、ミチは「PLAN 75」の存在を知り、相談窓口を訪れます。
そこで対応するのが、PLAN75の申請窓口で働く岡部ヒロム。
ヒロムは利用者一人ひとりに丁寧に接し、ミチにも親身に寄り添います。
最初は仕事として制度を案内していた彼ですが、ミチをはじめ多くの高齢者と向き合ううちに、「本当にこの制度は人を幸せにしているのだろうか」と心が揺れ始めます。
一方、PLAN 75のコールセンターで働く瑶子(河合優実)は、利用を希望する高齢者から日々電話を受けています。
マニュアルどおりに応対することが求められる仕事ですが、電話越しに伝わってくる利用者たちの孤独や不安に触れるうち、次第に感情を切り離せなくなっていきます。
さらに、外国人労働者のマリア(ステファニー・アリアン)は、PLAN 75に関わる仕事に従事しながら母国の家族へ仕送りを続けています。しかし、ある出来事をきっかけに、自身の生活も大きく揺らぐことになります。
ミチ、ヒロム、瑶子、そしてマリア。それぞれ立場も年齢も異なる人々の人生は、「PLAN 75」という制度を通して静かに交差していきます。
本作は制度の是非だけを描く映画ではありません。
人とのささやかな触れ合い、誰かに必要とされる喜び、そして社会の中で居場所を失っていく切なさを丁寧に積み重ねながら、「人は何のために生きるのか」「社会は誰のためにあるのか」という問いを、観る人へ静かに投げかけます。
派手な展開ではなく、一人ひとりの心の変化を丁寧に描くからこそ、登場人物の選択に自然と感情移入してしまう作品です。
3)見どころ
① 倍賞千恵子さんの圧倒的な存在感
ミチは決して特別な人物ではありません。
どこにでもいる、ごく普通のおばあさんです。
だからこそ、その表情や小さな仕草の一つひとつが胸に響きます。
多くを語らなくても伝わる孤独や不安、そして人としての尊厳。
倍賞千恵子さんだからこそ表現できた名演だと感じました。
② 誰も悪人ではないからこそ苦しい物語
この映画には、分かりやすい悪役はいません。
制度を作った人も、窓口で働く人も、それぞれ事情があり、自分の仕事を全うしようとしています。
だからこそ観る側も「誰が悪い」と簡単には言えません。
社会の仕組みが人を追い詰めていく様子が、とてもリアルに描かれています。
③ 静かな映像が生み出す重い余韻
派手な演出はありません。
音楽も控えめで、静かな時間が流れていきます。
しかし、その静けさが逆に登場人物の孤独や不安を際立たせています。
映画が終わっても、あの空気感はしばらく心から離れませんでした。
4)こんな人におすすめ
- 社会派ドラマが好きな人
- 心に残るヒューマンドラマを観たい人
- 倍賞千恵子さんの演技を堪能したい人
- 『万引き家族』『怪物』『護られなかった者たちへ』のような作品が好きな人
- 考察したくなる映画が好きな人
5)ゆっちゃんのひとこと
この映画は、「もし本当にこんな制度ができたら」という恐ろしさだけを描いた作品ではありませんでした。
私が一番心に残ったのは、人は制度によって生きることを諦めるのではなく、「自分はもう必要とされていない」と感じたときに、その選択肢へ近づいてしまうのではないかということです。
この映画を観ていると、人を追い詰めるのは病気だけではなく、「孤独」なのかもしれないと感じました。
誰かの寄り添いが、人に生きる意欲を与えてくれるのかもしれません。
ミチは決して派手な人生を送ってきた人ではありません。
真面目に働き、静かに毎日を生きてきた一人の女性です。
そんな人が社会の中で少しずつ居場所を失っていく姿を見るのは、本当に胸が苦しくなりました。
一方で、この映画は高齢者だけの物語ではありません。
若い世代もまた、仕事や生活の中で葛藤し、それぞれの立場から社会と向き合っています。
だからこそ、「これは遠い未来の話」とは思えませんでした。
今の日本にも通じる問題が数多く描かれているからです。
観終わったあと、「生きること」「支え合うこと」「人の価値とは何か」を自然と考えさせられます。
答えを押し付ける映画ではありません。
だからこそ、一人ひとりが違う答えを持ち帰れる作品なのだと思います。
エンターテインメントとして気軽に楽しめる映画ではありませんが、それでも私は多くの人に一度は観てほしい作品です。
映画だからこそ伝えられるメッセージが、この一本には確かにありました。
6)視聴方法
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7)関連作品
- 『護られなかった者たちへ』ネタバレなし感想|社会保障制度を鋭く描く傑作
- 『怪物』ネタバレなし感想|人は見えているものだけでは真実にたどり着けない
- 『ロストケア』ネタバレなし感想|介護の現実と命の重さを問いかける社会派ドラマ
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8)まとめ
『PLAN 75』は、近未来を舞台にしたフィクションでありながら、不思議なくらい現実味を感じる作品でした。
高齢化社会、孤独、働くこと、居場所、人としての尊厳。
どれも私たちの暮らしと決して無関係ではありません。
この映画のすごいところは、誰かを悪者にして終わらせないことです。
制度を利用する人にも、制度を支える人にも、それぞれ事情があり、それぞれ懸命に生きています。
だからこそ、観る側も簡単な答えを出せません。
映画が終わっても、「あの人ならどうしただろう」「自分だったらどう考えるだろう」と、自然と作品を思い返してしまいます。
静かな作品ですが、その余韻はとても大きく、時間が経つほど心に染み込んできます。
派手な映画ではありません。
それでも、人生について深く考えさせてくれる映画を探している方には、自信を持っておすすめできる一本です。
観終わったあと、きっとあなたの中にも、小さくても確かな問いが残るはずです。


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