
こんにちは、映画マニアのゆっちゃんです。
「犯人は誰なんだろう?」
そんなふうに犯人探しを楽しむサスペンスはたくさんあります。
でも、『チェイサー』は少し違います。
この映画では、かなり早い段階から「この男が危ない」ということが見えてきます。
それなのに、怖い。
むしろ犯人が分かっているからこそ、「早く気づいて!」「そこじゃない!」と、観ているこちらの焦りがどんどん大きくなっていくんです。
2008年に韓国で公開された『チェイサー』は、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作。
キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒという実力派俳優が出演し、実際の連続殺人事件をモチーフにした、かなり重く緊張感のある作品です。
私は韓国映画のサスペンスが好きなのですが、この作品はその中でも「韓国映画って、ここまでやるんだ……」と思わされた一本。
派手な仕掛けだけに頼るのではなく、人間の怖さ、警察組織のもどかしさ、そして「助けられるかもしれない命」を前にした焦りが、じわじわと胸を締めつけてきます。
怖い映画が苦手な方にはおすすめしにくいです。
でも、韓国サスペンスや韓国ノワールが好きなら、一度は観ておきたい作品ですよ。
1)作品基本情報
- 製作年: 2008年
- 時間: 125分
- 監督: ナ・ホンジン
- 出演者: キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ、チョン・インギ、パク・ヒョジュ、キム・ユジョン
- ジャンル: クライム・サスペンス・スリラー
- トリビア: ナ・ホンジン監督の長編デビュー作。2004年に韓国で起きた連続殺人事件を題材の一つとしており、実在の連続殺人犯ユ・ヨンチョルに着想を得ています。韓国では500万人を超える観客を動員し、第45回大鐘賞では作品賞・監督賞・主演男優賞など6部門を受賞しました。
『チェイサー』がナ・ホンジン監督の長編デビュー作だったというのも驚きです。
その後、『哀しき獣』『哭声/コクソン』を手掛けることになる監督の原点ともいえる作品。
この頃からすでに、普通のサスペンスとは一味違う、息苦しいほどの緊張感を作り出していました。
2)あらすじ(ネタバレなし)
元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)は、現在はデリヘルを経営しています。
警察を辞めたあと、決して褒められるような仕事をしているわけではありません。
短気で口も悪く、女性たちに対する態度も決して優しいとはいえない人物です。
そんなジュンホのもとで働く女性たちが、次々と姿を消していました。
最初は、別の店に移ったのではないか。
そんなふうに考えていたジュンホ。
ところが、失踪した女性たちが最後に連絡を取った客の電話番号が、ある一人の男につながっていることに気づきます。
そして、その夜。
ジュンホは、同じ電話番号の客から指名を受けたミジン(ソ・ヨンヒ)を送り出します。
ミジンには幼い娘ウンジ(キム・ユジョン)がいます。
仕事へ向かったミジンですが、やがて連絡が取れなくなってしまいます。
嫌な予感を覚えたジュンホは、ミジンの行方を追い始めます。
そして、街中で一人の男と遭遇します。
その男の名前はヨンミン(ハ・ジョンウ)。
一見すると、どこにでもいそうな普通の男です。
しかし、ジュンホは彼の様子から、ただならぬものを感じ取ります。
やがてジュンホはヨンミンを追い、ついに捕まえることに成功します。
ここまで聞くと、
「犯人を捕まえたなら、事件は解決するんじゃない?」
と思いますよね。
ところが、ここからが『チェイサー』の恐ろしいところ。
決定的な証拠が足りない。
被害者の行方も分からない。
そして警察も、すぐには事件の全貌をつかむことができません。
一方、ミジンは消息を絶ったまま。
ジュンホは、彼女がまだ生きている可能性を信じて、必死に行方を探します。
「犯人を見つける」という物語ではなく、
「まだ間に合うのか?」
という時間との戦いへ変わっていくのです。
しかも、観客はある程度の段階で、ヨンミンという男の恐ろしさを知っています。
だからこそ、ジュンホが街を走り回る姿を見ていると、こちらまで焦ってしまう。
警察に任せればいい。
そう思う一方で、「いや、早く探して!」という気持ちも強くなっていきます。
雨の降る街。
入り組んだ路地。
薄暗い住宅街。
雨の降る街や入り組んだ路地、薄暗い住宅街などが、作品全体に不穏な空気を漂わせています。
そして、ジュンホ、ヨンミン、ミジン。
それぞれの立場や感情が交錯することで、単なる犯人追跡映画ではない、人間の怖さが浮かび上がってくるのです。
3)見どころ
① 「早くして!」と言いたくなる圧倒的な焦燥感
『チェイサー』を観ていて何度も感じるのが、
「もう時間がない!」
という焦りです。
普通のサスペンスなら、犯人が分からないからドキドキしますよね。
ところが、この映画は違います。
犯人の存在が見えている。
それなのに、簡単には止められない。
証拠が足りなかったり、情報がうまく伝わらなかったり、警察の対応に歯がゆさを感じたり……。
「どうして、そこでそうなるの!」
と、観ているこちらまでイライラしてしまいます。
でも、そのイライラこそが、この映画の大きな魅力。
ジュンホと一緒になって走っているような感覚にさせられます。
② 犯人が分かっているのに、最後まで緊張感が続く
この作品では「犯人は誰?」という謎解きが中心ではありません。
むしろ、「犯人が分かっているのに、なぜ捕まえられないのか」という状況が恐ろしい。
そしてハ・ジョンウ演じるヨンミンが、とにかく不気味です。
大声を出して威嚇するタイプではありません。
感情をむき出しにするわけでもない。
淡々としているからこそ、何を考えているのか分からない怖さがあります。
一方のキム・ユンソク演じるジュンホは、完璧な正義のヒーローではありません。
むしろ欠点の多い男です。
だからこそ、そんなジュンホが必死になって走る姿に、いつの間にか感情移入してしまう。
この二人の対照的な存在感が、作品をさらに強烈なものにしています。
③ 雨と夜の街が作り出す、重苦しい空気
『チェイサー』は、映像から伝わってくる空気も印象的です。
明るく開放的な場所ではなく、雨の街、狭い路地、薄暗い建物などが多く登場します。
そのため、画面を観ているだけで落ち着かない。
「何か起こりそう」
という嫌な予感がずっと残ります。
しかも、過剰に美しく撮ろうとしている感じがありません。
むしろ現実の街をそのまま覗いているような生々しさがあります。
だから怖い。
派手なホラー演出とは違うのに、日常のすぐ隣にあるような恐怖を感じさせられます。
4)こんな人におすすめ
- 緊張感のある韓国サスペンスが好きな人
- 韓国ノワールが好きな人
- 犯人が分かっていてもハラハラする映画を観たい人
- キム・ユンソクの演技をじっくり楽しみたい人
- ハ・ジョンウの強烈な悪役を観てみたい人
- 『新しき世界』『悪人伝』などの韓国犯罪映画が好きな人
※かなり重いテーマや暴力的な描写があります。気軽に楽しむタイプのサスペンスではありません。
5)ゆっちゃんのひとこと
『チェイサー』を観て、まず思ったのは、
「これ、2008年の映画なんだ……」
ということでした。
今観ても古さをほとんど感じません。
むしろ最近の韓国サスペンスを観ているような感覚で、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
そして、キム・ユンソクとハ・ジョンウが若い!
今では韓国映画を代表する俳優の二人ですが、この作品では二人の若さとエネルギーが画面から飛び出してくるようです。
特にハ・ジョンウ。
私が知っているハ・ジョンウとは、ちょっと違う。
派手に狂気を見せつけるわけではないのに、そこにいるだけで嫌な感じがするんです。
普通に話している。
普通に歩いている。
それなのに、どうしてこんなに怖いんでしょう。
これは俳優さんの演技力があってこそですよね。
そして、キム・ユンソク演じるジュンホも好きでした。
「正義の味方」ではないんです。
人間的に問題もある。
最初から立派な主人公というわけではありません。
でも、ミジンを探すうちに、必死になっていく。
その姿を観ていると、
「もうジュンホ、頼むから間に合って!」
と、いつの間にか応援していました。
ここが、この映画のうまいところだと思います。
完璧なヒーローだから応援するのではない。
欠点だらけの人間だからこそ、必死になっている姿に心を動かされるんですよね。
そして、この映画を観ていて一番苦しくなるのが、警察とのやり取りです。
「そこまで分かっているのに、どうして?」
と思う場面が何度もあります。
もちろん、現実の捜査には証拠や手続きが必要です。
映画だから簡単に犯人を捕まえればいい、という話でもありません。
だからこそ、理屈では分かっていても、観ている側としては歯がゆい。
「もう時間がないのに……」
そんな気持ちが積み重なっていきます。
この焦燥感が、とにかくすごいんです。
『チェイサー』は、単純に「怖い映画」ではありません。
人間の弱さや、組織のもどかしさ、そして目の前にある危機に対して、なかなか思うように動けない現実が描かれています。
だから観終わったあとも、スッキリ爽快!とはなりません。
むしろ、胸の中に重たいものが残ります。
でも私は、こういう映画が嫌いじゃないんですよね。
「面白かった」で終わらず、
「もし自分がこの場にいたら、どうするだろう?」
と考えてしまう作品だからです。
韓国映画は、人間のきれいな部分だけではなく、弱さや醜さ、社会の歪みまで真正面から描く作品が多いですよね。
『チェイサー』は、その魅力がかなり濃縮された一本だと思います。
怖い。
重い。
苦しい。
それでも、先が気になって止められない。
そんな映画を探している方には、ぜひおすすめしたい作品です。
韓国サスペンスの名作を一本挙げるなら?
私は『チェイサー』を外せません。
まだ観ていない方は、ぜひ心の準備をしてから観てくださいね。
6)視聴方法
『チェイサー』は、現在U-NEXTで見放題配信されています。
125分の作品なので、映画を一本じっくり観たい夜にもぴったり。
ただし、かなり重い作品なので、明るい気分で映画を楽しみたい日に選ぶより、「今日は濃いサスペンスを観たい!」という日におすすめです。
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『チェイサー』は現在U-NEXTで見放題対象となっています。
U-NEXTは韓国映画や韓国ドラマも豊富なので、韓国映画が好きな方とは相性のいい動画配信サービスです。
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7)関連作品
『チェイサー』が好きな方には、こちらの韓国映画もおすすめです。
・『新しき世界』ネタバレなし感想|韓国ノワール最高峰と呼ばれる理由
・『悪のクロニクル』ネタバレなし感想|追う側が追われる側になった極上サスペンス
『チェイサー』のような重厚な韓国サスペンスが好きなら、『新しき世界』もかなりおすすめです。
また、韓国映画をいろいろ探したい方は、私が選んだ韓国映画のおすすめ記事もぜひどうぞ。
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8)まとめ
『チェイサー』は、犯人を探すサスペンスではありません。
むしろ、犯人が分かっているからこそ、
「早く捕まえて!」
「間に合って!」
と、観ている側の気持ちまで追い込んでくる映画です。
元刑事ジュンホを演じるキム・ユンソクの人間臭さ。
そして、連続殺人犯ヨンミンを演じるハ・ジョンウの不気味な存在感。
この二人の対比が、本作の大きな魅力になっています。
さらに、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作とは思えないほど、緊張感の作り方がうまい。
雨の街、薄暗い路地、すれ違う情報、刻々と迫る時間。
一つひとつが積み重なって、観ているこちらを逃がしてくれません。
ただ、明るく楽しい映画ではありません。
暴力的な描写もあり、テーマもかなり重いです。
それでも韓国サスペンスが好きな方なら、観る価値は十分にあると思います。
私は『チェイサー』を観て、韓国映画の「人間の怖さをここまで真正面から描く力」に改めて驚きました。
怖いのに、目をそらせない。
苦しいのに、先が気になってしまう。
そして観終わったあとには、単なる犯人追跡劇ではなかったことに気づかされます。
「こんな映画、もう一度観たい」と思えるタイプではないかもしれません。
でも、「一度観たら忘れられない映画」ではあります。
韓国サスペンスをまだあまり観たことがない方にも、韓国ノワールが大好きな方にも、一度は観てほしい一本。
ぜひ、心の準備をしてから観てみてくださいね。



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